2009/2/2 ラオスのドライバー事情

2015/3/23

2009/2/2ビエンチャン事務所         

田川 友康

ラオスのドライバー事情

ラオスにも交通法規はあるが、読んだことがある市民などほとんどいないだろうし、その存在すら知らないのではないかと思われる。多くの人は見よう見まねで 車を運転している。ドライビング・スクールはあるが、前進後退と駐停車、路上での走行ができれば卒業させてくれる。しかし、スクールで教習を受ける人はま だ良い方で、中には運転ができる親から運転要領を教わっただけで市内を走りまわっている者もいる。更に、オートバイを運転している者の中には、明らかに小 学生としか思えない子どももいる。もっとも、昭和30年代半ばの日本でも運転免許証は前進後退ができる程度で貰えたし、無免許運転も多かった。あの頃の日 本と大差はない。しかし、当時の日本では自家用車を持っている人はほんの一握りで、走っている車の台数も極めて少なかったから、その程度でも問題はなかっ たのだろうが、現在のラオスは、タイ、ベトナム、カンボジアほどではないにしても、この1~2年間に急速に車の数が増加し、特にオートバイの増加は著しく 交通量は比較にならないほど多い。そんな中で無免許や運転技量未熟なドライバーが少なくないのだから、事故が起きないほうが不思議なくらいで、事故を目撃 しない方が珍しい。

約2ヶ月ほど前のことだが、ラオスに在住するある日本人が、街灯は勿論のこと民家の明かりさえないビエンチャン県内の国道をすっかり暗くなった20時過 ぎに走行中、突然何かがぶつかり大きな衝撃を受けて急停車して見ると、そこに血だるまになった若い男性が転がっていたという。警察の調べによるとその若い 男性は、その日、結婚式で酒を飲んで夕方5時頃、トラックに追突してヘッドライトを壊す事故を起こしていたという。その後、再び結婚式場に戻り(結婚披露 宴はラオスでは通常朝から深夜まで延々と続く。)45度近い強い地酒「ラオ・ラーオ」をしこたま飲んで国道に出たと言うのだから事故を起こさない方が不思 議だろう。即死常態だったその若者は、無免許、飲酒運転、スピード違反、センターライン・オーバー、ヘルメット未着用、その上、当然無灯火で運転し、交通 法規など糞喰らへ位にしか思っていなかったに違いない、しかし、そんなドライバーは決して少なくないのだから事故は日常茶飯事に起きる。そんな事故だが、 その日本人男性はトイレと茣蓙、蚊帳しかない寒々とした拘置所に留置されたあと、刑務所に移されたのだから人事と言っては済まされない。ラオスの国内法で はどのような状況で発生した事故であろうとラオス人の保護を優先しており、彼は賠償金と保釈金を払うまで、底冷えのする刑務所暮らしを余儀なくされた。
 昨年暮、JMASで2年以上も働いていたドライバーが急に退職を申し出てきた。JMASの契約書には退職する場合は1ヶ月以上前に申し出ることと記述し ているが、そんなことに頓着しない。2日後に退職したいというのを「ノー」と言ったところで詮無いことで承認することにした。それから俄かにドライバー探 しが始まった。英字紙のビエンチャンタイムスは20ページのタブロイド判だが、その内5ページが国際機関やNGOなどのスタッフの募集広告だから、人材を 求めている団体が如何に多いかが窺がわれる。今回はドライバー採用の募集広告を出してもいないのに、あちこちから30歳前後から50歳近い人まで26人が 応募してきた。口コミなのか、あるいはラオス人社会には情報伝達のための独特のネットワークがあるのか判らないが、それだけ仕事を探している人が多い証拠 だ。JMASラオスではこれまで国会議員や町の有力者、あるいは政府機関が推薦してきた者をそのまま採用したことは一度もなく、どんな人でも直接面接し、 能力を確かめて採用することを一貫して守っており、納得できるドライバーを見つけるまで多大な時間と労力を強いられた。
応募してきた人は、運転歴20年以上と言う者がほとんどだったが、実地試験に臨むとスタートできないものが7~8人はいた。彼らの運転歴とはオートバイか トゥクトゥク(小型のオート三輪車)を運転していたことをカウントしているとしか思えない者もいた。ラオスには大きな企業もないため、慢性的な高い失業率 になっており、そのため買い手市場になっているが、安心してハンドルを任せられるドライバーは決して多くはない。ウインカーを出さないで進路変更をする者 や一旦停止をしないドライバーはザラに居て、安心して乗って居られない。それはともかく1ヶ月以上に亘ったドライバー探しは1月末に漸く終息した。事故に 遭わないように、事故を起こさないように願いながら日々車に乗っている。
市民の足はもっぱらバイク、街中のバイク・自転車の修理屋さん トゥクトゥクは公共交通機関に代わる市民の大切な足
早朝の時間帯は交通量は極端に減少 朝夕の通勤時間帯はどこもラッシュ
歩道上に作られた役所前のバイク置き場 買い物もバイクかトゥクトゥクを利用する人が多い