JMASパキスタン事務所
櫻井 佑樹
イスラムの文化、断食月について紹介したいと思います。
イスラム教の国では、イスラム暦(欧米や私たちが使っている太陽暦でなく、日本でもかつて使用していた太陰暦です。)の第9月、年に1度、約1ヶ月の断食 月があります。イスラム教徒の義務である断食は、日の出から日没まで、一切の飲食、喫煙等が禁止されています。この理由は諸説ありますが、預言者ムハンマ ドが弟子たちと共に、マッカからメディナへの移住(ヒジュラット)する際の道中の苦行を体現したものといわれています。
また、当事務所の現地スタッフによ ると、1つは、毎日3度の食事が毎回できる人はいないから、その貧しい人の気持ちを分かち合うため、もう1つは、昨今、日本でも流行っていた、解毒効果 (デトックス)があるとイスラム教徒の人は信じています。しかし、個人的には、日没後、日の出前に、食事を取る方が、かえって体によくない気がします。ま た、断食は異教徒には強制されず、12歳以下の子ども、病人、旅行者、妊婦などは免除されています。食事は、日没後の、イフタール(Iftar、 7.10pm)、日の出前のセーリ(Sehri、2.30-3.45am)にとります。私が、イフタールの食事に参加したときは、メインの食事をする前に 必ずお祈りをしていました。イフタールは、親類、会社の同僚をよび皆で食事するのが一般的のようです。夜の停電も、このラマザン期間は、その他の日に比べ て少ないように思われます。
人々は、ラマザンが始まると、「ラマザン・アル・ムバラク」と挨拶を交わします。宗教または文化的な行事で人々が挨拶を交わすのは、今の日本では、お正月くらいなものでしょうか。そういった位置づけのものだと思います。
このラマザン期間は、仕事にも影響します。事務所も業務時間を短縮したりします。例えば、公官庁は、8.00-13.00が業務時間のようです。また、土 木工事では、労働者の人数が減り、ペースが落ち、その影響は、ラマザン明けのイード休暇が終わるまで続きます。下記の写真のように昼間は働かないでいるの が、伝統のようです。
断食月の始まりは、太陰暦のため月の観測によって行われます。パキスタンでは、宗教省や宗教指導者たちが観測を行います。何らかの事情によって天文台から 月が観測できないときは1日程度ずれることもあります。例えば、2011年はパキスタンのカイバル・パクトゥーンクワ州とパンジャブ州では1日開始日がず れました。
イスラム圏でもそれぞれの国や地域によっても少しずつ違いがあるようです。
1 日本では「ラマダン」として知られています。主に中東地域では「ラマダン」と言うようですが、パキスタンの人々は「ラマザン」と言います。