「平和の鐘寄贈」

2015/3/25

「平和の鐘寄贈」第3弾

2012/2/15

「爆弾の鐘はもう要らない。僕らの学校に平和の鐘が鳴り響く」第3弾

2012年2月8日、プラサートバコーン郡にあるコーンサット小学校で、東京の渋谷教育学園渋谷中学高等学校から贈られた「平和の鐘」の贈呈式が行われました。

JMASでは各地で地雷除去作業、不発弾回収処理にあたっていると、火薬を抜いた不発弾を授業ベルの代わりとして使用している学校に遭遇することが 多々あります。「その不発弾を叩く先生達に、もちろん悪意はないけれども、先生たちが毎日不発弾を叩く姿を子供達が目にし、『不発弾は叩いてもいい』と 思ってしまったら大変だ」
しかし、実際に回収しようとした時、先生たちは首を横に振りました。「この鐘(不発弾)は回収しないで下さい。これを持って行ってしまったら、この学校から始業と終業を知らせる『鐘』はなくなってしまいます」
―――不発弾と鐘とを交換するこのプロジェクトは、地雷・不発弾による被害者、特に子供の被害者を少しでも減少させたいという、ある専門家の思いから始まりました。

今回は渋谷教育学園渋谷中学高等学校の皆さんが、現場で危険回避教育の際に使用している「危険回避ノート」を日本で複製して販売し、その収益金で平和の鐘を作成し、寄贈して下さいました。

これは昨年6月、同高校2年生の大谷あみさんがJMAS本部で研修を受けた時にノートを1000冊売らせて欲しい、その収益金で井戸を寄贈したいと の申し出があったのがそもそもの始まりでした。結局井戸は高額なので「平和の鐘」ということになり中学生を含む全校生徒の皆さんの協力を得てようやく実現 したと聞いています。

今回「平和の鐘」が寄贈されたコーンサット小学校では、長い間大きな爆弾の殻が授業用ベルとして使用されてきました。かつては人を殺傷し、建物を崩壊させた兵器は今は鉄の塊として校庭の片隅の木に吊るされていたのです。

学校総出の手厚い歓迎を受けてから、早速爆弾の殻を取り外しました。

シェムリアップ州は世界に誇るアンコールワット遺跡があり、観光地としても有名ですが、車を1時間走らせると、この小学校の子供達のようにほとんどが裸足で生活するような貧困地区があります。

一見のどかな風景に一緒になって存在していた不発弾。ついそこまでいつもあった爆弾の殻、いつも聞き慣れていた「鐘」が回収され、小学生達も「一体何をするんだろう?」と不思議そうにみつめています。
しかし、不発弾を解体し、鉄を売ろうとする貧困層の事故が跡を絶たないカンボジアで、「これは危険なものなのだ!」と理解することが、事故予防の貴重な第一歩につながるのです。

大きな爆弾の殻を回収した後、渋谷教育学園の皆さんの平和への願いが詰まった鐘が寄贈されました。鐘の贈呈には校長先生をはじめとする学校の職員の皆さんだけでなく、村長、警察も立ち会い、「不発弾をみつけたらこのように回収する」というのを皆で確認し合いました。

「これからは爆弾ではなく、皆でこの鐘を使いましょう!」「また、他で不発弾を見た時は絶対に触らずに、お父さん、お母さん、先生、警察のおじさんやJMAS、CMACのおじさんに連絡しましょう!」
鐘の贈呈のおかげで、また一つ危険回避教育をすることができました。

危険回避啓蒙教育の後、贈呈式に参加してくださった同高校3年生の小林明日香さんから鐘に刻まれたメッセージの説明がありました。

鐘には英語でこう書かれています。

We may be small as an individual but if
we support each other
and
work together
I know that together we can create a world filled with smiles and happiness
from
Shibuya Junior & Senior High School Tokyo Japan

「これからを担う私たちの世代が、共に手を取り合い進んでいけば、必ず笑顔と幸せに満ちた世界を創り出すことができる」という深いメッセージが込められていました。

贈呈の後、皆で一緒に綱を引き、美しい平和の音色が村中に響き渡りました。

学校にあった不発弾が鐘と取り換えられたのはもちろん非常に大切なことですが、今回このように一つの鐘を通して、国を越えた青年の交流ができたこと は非常に意義深いことであったと思います。自分が行ったこともない国の同じ青年が、自分の国の平和をどこかで祈ってくれていることを、この鐘を通してカン ボジアの青年達にも伝わればと思います。

遠くの同じ世代の子供達に思いを馳せ、平和を願い、今回鐘の寄贈に携わって下さった大谷あみさん、小林明日香さんはじめ、渋谷教育学園渋谷中学高等学校の皆さん、本当にどうもありがとうございました。

報告者:プノンペン 新井智恵