コロール州周辺海域における不発弾(ERW)処理事業(第1期)

2015/10/9

日本NGO連携無償資金協力完了報告書

 

 

  事  業  名  

コロール州周辺海域における不発弾(ERW)処理事業(第1期)

  事 業 期 間

2012年12月4日 ~ 2014年2月28日(延長期間 3ヶ月)

事業の概要と成果
(1) 上位目標の達成度     

ア パラオ港外のヘルメットレック周辺海域(約1,000㎡)の爆雷による汚染状況の調査

  ヘルメットレック船内及び周辺に散在する爆雷の所在及びピクリン酸の漏洩状況を把握しEQPB(Environmente Quality 

 Protection Board)及びHPO(Hstoric Preservation Office)に環境調査結果として報告し、パラオ政府のUXO対処方針

 の策定に寄与した。

 

イ ピクリン酸漏洩の低減

  ピクリン酸が漏洩している爆雷のうち漏洩が激しい4個に対して密封作業を実施した。全漏洩低減作業の5%(推定)程度を

 密封すたことにより、僅かではあるが漏洩の低減に貢献した。

(2) 事業内容 

ア パラオ港外におけるヘルメットレック周辺海域(約1,000㎡)を対象として2013年2月~3月に環境調査及び爆雷の調査を

 実施し、164発の爆雷の散在位置及びその状態を調査(爆雷への接触及び移動を除く)し、調査結果をパラオ政府関係機関

 に報告した。

  また、10月にヘルメットレック船内の作業に限定した調査・作業(爆雷への接触は可、移動は禁止)許可を取得し、爆雷の信管

 の有無及びピクリン酸の漏洩状況についての詳細な調査を行い、各々の爆雷の状態を確認し、処理要領についての検証を実施

 した。

 

イ 爆雷を移動するための密封作業要領を検証し、その密封作業を行うための水深の浅い海中作業場所について、コロール州

 からの指定を受けた。さらに爆雷の完全密封作業及び海上輸送を行うため筏を製作した。

 

ウ 11月にパラオ政府から「爆破処理は、信管付爆雷のみとし残余の爆雷はピクリン酸の漏洩防止低減処置を行う」・「信管付

 爆雷については、CGD(Cleared Ground Dimining)と協同して爆破処理を実施する」との方針の変更が出されたため、

 JMASとして「ピクリン酸漏洩密封作業要領」・「信管付爆雷の梱包輸送要領及び爆雷処理場までの輸送要領」を策定し、提言書

 を提出した。この提言書に対し、パラオ政府関係機関及び国家地雷処理ワーキンググループ(UXOWG)と作業許可の承認に

 ついて長期の調整を余儀なくされたため、2014年2月28日までの3ヶ月の事業申請書を提出し承認を受けた。

 

エ 継続調査の結果、2014年1月、JMAS提案の爆雷亀裂補修要領が承認され、パラオ政府各機関の作業許可を取得し、関係

 機関に作業告知を提出、2月以降、ピクリン酸の漏洩の著しい第3船倉に散在する爆雷4個について亀裂補修密封作業に着手

 した。

 

オ 信管付爆雷の処理については、CGDと口頭の合意まで得た段階であり、今後MOUの締結及び細部要領等に向けた調整を

 実施しる。

 

カ 技術移転

  レンジャー隊員2名及び潜水補助者1名に対して潜水要領、ERW処理教育を実施した。

 

キ UXOWGへの助言は、機械を得て適時実施した。11月にパラオで開催されたGICHDワーキングショップ(ADDRESSING 

 ERW CONTAMINATION IN THE PACIFIC)に参加しJMASの活動状況について述べた。

 

(3) 達成された成果

ア コロール州からの海中調査許可を受けた2013年2月~3月に現状確認潜水では164発の爆雷を確認し、現状及び処理要領

  について、パラオ大統領へ事業説明を実施した。2014年1月の最新現状確認潜水ではUXOWG(公共治安局長)立ち合いの

  下、爆雷処理対象である信管付爆雷2発を特定し、処理対象爆雷は165発となった。

 

イ 爆雷の処理

  ピクリン酸が漏洩している現状が目視確認できる爆雷77発を特定し、優先的に順次処理を実施することとし、今期は、作業

 許可取得に時間を要したため作業期間が短く、爆雷4発に対してのみ処理を完了した。

 

ウ 現地スタッフへのERW処理補助者としての訓練

  レンジャー隊員2名に対し、技術移転計画に基づき訓練した結果、レベル2まで向上した。ERW処理技術については、作業

 処理実施期間が短期間であったため、次年度以降訓練する予定である。また、センス作業補助者(現地雇用)1名に対しては、

 汚染潜水器脱着及び緊急事態対処に係る補助者としての技術をOJT教育で習得させた。

 

エ UXOWGへの助言

  UXOWG主催の会議に参加し、海中調査結果を逐次報告するとともに、ERW処理要領の説明・提言を実施した。必要に

 応じパラオ大統領、国務大臣、州知事、国務省局長等に対し、ERW処理の必要性・処理要領への理解を得るため、機械を

 とらえ説明を実施した。また、2013年11月、ジュネーブ国際人道地雷除去センター(GICHD)が主催した会議に出席し、

 パラオにおけるJMAS活動を紹介した。

  GICHDは、パラオ政府の要請により、2013年6月から11月の間、ヘルメットレック海域における環境調査等を実施し、11月

 パラオ政府へ結果を報告した。

 

(4) 持続発展性

ア 技術移転

  技術移転は単年度計画ではなく、3期までの事業期間で徐々に段階を経ながら実施されるものであり、今期では2名の隊員

 に対しての教育を実施した。また、当初パラオ国務省から、レンジャー隊員からの採用を要望されたが、彼らも公務員である

 ことから、中途からの採用ではなく協力関係の下で教育を行った。それらの状況かであったため、2名の隊員とセンス作業補助

 者1名の教育に留まった。次期事業を通じてさらに被教育者数を拡大した教育を継続することにより、数多くパラオに残存する

 UXOの処理に彼らが貢献できるものと考える。

 

イ UXOWGへの助言

  大洋州各国は、UXOの処理を急いでおり、パラオも国家地雷処理ワーキンググループを設立するとともに、2012年、2013

 年とUXO対処の会議を開催する等国際社会に支援を求めている。JMASとして適切な助言を行うことを今後とも求められて

 いる。