平成24年度「カンボジア・タケオ州における不発弾処理促進事業」

2015/5/13

平成24年度事業完了報告

2012年度バッタンバン州における地雷処理促進事業

1. 事業期間:2012年9月9日~ 2013年9月8日

2.事業の概要と成果

(1)上位目標の達成度

ア CMACの自立処理能力の向上に寄与 CMACに対し、機械と人力による統合処理、ランドリリース及び管理技能について所要の地雷処理技術を移転し、自立能力の向上に寄与した。技術移転は、目標の70%に対し73%であった。

イ 地域住民の安全性増大に寄与 処理跡地において地雷事故は発生しておらず、地域住民の安全確保に寄与した。

(2) 事業内容

ア 技術移転 OJTをIMAS隊員に対して48回261名に、計画教育をCMACのDU2及びDU1内小隊に対し9回291名に対し実施した。集合教育をCMAC内小隊長等に対し3回155名に実施した。

(ア) OJT

① 現場指導 ランドリリースのSOP、DM・BCの運用、戦術判断、安全管理及び業務管理等48回実施した。 ② 計画教育 地雷処理、ランドリリースの基礎事項及び技術事項、補給整備及びブリーフィング要領等について9回実施した。

(イ) 集合教育(ITTT) 2月、4月、7月の3回実施し、CMAC内地雷小隊長等155名が参加した。

(ウ) CMACと合同巡回評価 CMACと合同で、11月、3月及び7月に延べ12個小隊と1個BCチームに対しDU1、DU2及びDU6において巡回評価を実施した。

(エ) 練度評価 リフレッシャー訓練時、2月、4月及び7月の集合訓練時を利用し、学科試験を3回、練度評価を4回実施した。

イ 地雷処理 ランドリリース方式に基づき、機械処理と人力処理の統合処理により266haの地雷原を処理した。

ウ 付随事業(業務) 近隣小学校で24回、住民に対し11回、計35回実施し、参加者は1,127名であった。

エ 広報 JICA関係者をはじめ、16回75名に対応した。

(3)達成された効果 

本事業期では、CBD編成から機械力を重視した編成へ改編するとともに、サイトマネージャーを組織し、ランドリリース方式、機械力と人力の統合処理及び管理技能を重視して技術移転を行った。 ア 技術移転 (ア) 裨益者 事業編成内小隊の指揮官等16名、隊員44名の計60名、事業編成外の各級指揮官等333名、合計393名であった。

(イ) 小隊長、副小隊長、班長の練度計画 学科試験は年度当初、51点台であったが、年度末には71点に到達した。練度評価についても、年度当初51点台であったが、年度末には73点に到達した(目標はいずれも70点)。 しかし、効率的作業に関する事項については、計画、実施段階ともに不十分であり、更に技術移転を推進する必要がある。 別紙第2-1「練度評価まとめ」 別紙第2-2「学科試験結果」

(ウ) OJT

① 機械処理と人力処理の統合処理 小隊長クライスは、機械と人力処理班の連携について理解してきたが、機械運用に関する指揮能力は不十分である。

② 班長クラスは、人力との連携要領が逐次向上してきたが、軟弱地の作業限界等地形、気象に応じた機械運用は不十分である。 別紙第2-3「個人練度評価表」

③  ランドリリース サイトマネージャー及び小隊長は、BSL(ベースライン・サーベイ)分類、地雷原の脅威分類については理解し、実行できるようになったが、TS(テクニカ ル・サーベイ)のシステマチック方式に関する理解が不十分である。また、小隊長はNTS(ノン・テクニカル・サーベイ)全般について、副小隊長と班長はラ ンドリリース全般について理解が不十分である。更に、JMAS専門家の指導に基づき新たな地雷原が認定されたことは、各級指揮官の戦術判断能力が欠如して いることを示している。今後、専門家の指導により、更なる能力向上が必要である。 別紙第2-3「個人練度評価表」

④  管理技能 全般的には、専門家の継続的な現場指導等により、管理意識は向上してきた。小隊長クラスは、専門家の助言を得て、作業見積もりを実施する等管理ができるよ うになったが、作業の効率に関する追及意識が欠けるとともに、機械班長に対する統制力が不十分である。班長クラスは、補給整備能力が格段に向上したが、傾 斜地、軟弱地における作業限界見積不十分に起因した工程管理が不十分である。 別紙第2-3「個人練度評価表」

(エ) CMACと合同の巡回評価 ランドリリース、指揮官のブリーフィング要領及び地雷処理小隊の活動について、延べ12個小隊の巡回評価を行った。ランドリリースの理解度については、各 小隊の格差が大きく、また、ブリーフィングの練度についてもJMAS小隊長とそれ以外のCMAC小隊長との練度には大きな差があった。この原因は、 JMAS小隊長は専門家の直接指導の他、見学者にこれを行う機会が多いのに比べ、他CMAC小隊長は年間一度もブリーフィングを行うことがない等ブリー フィングの意義を軽視しているためであり、CMACが小隊長にマネージメントを求めていないからである。地雷処理作業については、作業要領、管理施設、関 係書類の検査を行ったが、一部で不備が見られたものの、全般的には概ね良好であった。 別紙第3「合同モニタリング結果と今後の対応」

イ 地雷処理

(ア) 今年度の目標256haに対し、266haを処理した。3.9%増加したのは、地形、地質及び気象特性に応じたDM、BC及び人力の組み合わせが適切で あったことと、機械の故障時DU2本部及びワークショップ等関係者の努力により不稼働時間を最小化に努めたことが背景にある。また、今年度AT8個、 AP182個、UXO168発、金属片469,976個を処理した。

(イ)ランドリリース方式の採用により、地雷の存在確率が相対的に低い地域での作業効率が向上した。また、NTSをDU2本部のTSOに頼らす、事業編成 下独自で実施できるよう演練し、その能力を向上させた。これにより、NTSと地雷処理作業実施時期との連携が図られ、正確かつ確実な地雷処理作業が実施で きるようになった。更に、CMAAの抜き打ち点検においても地雷除去信頼度「良好」の評価を得るとともに、処理跡地において事故は発生しておらず、地域住 民の安全に十分寄与できると考える。

(ウ)処理した266haの内、262ha(98.7%)が農地に、3.4ha(1.3%)が道路に転用され、農地の内訳では、トウモロコシ畑が 130ha(48.9%)、キャッサバ畑が83ha(31.2%)、水田が53ha(19.9%)である。農業従事者の98世帯が直接裨益者であり、彼等 の生活環境の改善、向上と地元経済に寄与している。また、道路利用者等地雷処理地域村民の1175世帯が関節裨益者と考えられる。

ウ 危険回避教育(参考) 主として小学校における計画的な教育を実施した。また、コミューンに対する情報提供、資料の配布を行うとともに、小・中学校、診療所、食堂等にポスターを 掲示した。更に、事業地近傍の農作業従事者、通行人等に機会教育を実施するとともに、新たな入植者に対する教育を実施する等、事業の終始を通じ積極的に危 険回避教育を行った。地元密着型教育としての効果は、広報効果を含め大きいと考えている。

エ 広報(参考)

(ア) JMAS事業を訪れた日本国内居住者、カンボジア居住者、中国居住者等75名に対し、JMAS事業の実情を広報した。

(イ) 関連事業であるSVC事業5周年祝賀式を事業地で行い、州知事、CMAC長官及び地元住民、並びに日本大使代理など関係者約2,000名が参加し、全員で事業の成功を祝った。JMAS事業が行政、地元住民等から強く支持されていることが改めて示された。 

(4)持続発展性

ア OJT、ITTT訓練等を通じて、JMAS内小隊に対する技術移転は確実に進展しているが、JMAS外のCMAC小隊に対しては限定的であ る。このことは、2年目としてのJMASの技術移転が予定通り進展していることを示すとともに、常時作業現場において技術指導を行う専門家の有用性を示し ている。今年度の実績から、JMASは来年度、3ヶ年事業の集大成としての技術移転を完了できる自信を得た。この技術移転を通じてCMAC自ら、技術力を 高め作業能力を発揮することが可能となる。

イ 今年度まではNTSに関する権限はDU2本部にあったが、来年度からJMAS内小隊でNTSを行えるようになった。この隷下組織への権限委譲は CMACにとって初めてであり、JMASからの要求に基づくものでもある。今後、ITTT訓練等を通じて処理実行組織がマルチ能力を保有するようCMAC 全組織に波及することが期待される。

ウ DM及びBCチームを各小隊の編成下に入れ、各小隊長の指示で機械処理を実施しているのはCMAC内でJMAS内小隊だけである。今後、この編成及び運用について、前項のNTSを含め、CMAC他小隊に普及していく。